人生
胸の高さからボールを落とした
ボールは地面に当たり
跳ね返った
跳ね返ったボールは
腹の辺りまでしか
到達しなかった
ボール本人はまた胸の辺りまで
跳ね返ると思っていたので
それが不思議だった
ボールはまた落ちて
地面に当たり跳ね返った
次は腿の辺りまでしか
到達しなかった
ボール本人は何かに気付いた
しかしそれが何なのか
そこまでは分からなかった
ただ胸の奥から不安が
湧き上がってくるのが分かった
次は膝までしか跳ねず
次は…
重力だ…
ボールは薄れゆく意識の中
遠い昔
胸まで跳ねたあの日のことを思った
叶わない
笑いたい
他に何もいらないから
あの娘と美味しいもの食べて
毎日暮らしたい
時計なんてないのに
秒針の音が聞こえる
半端な季節の半端な時間に
空にペタッと
セロハンテープで
満月を貼り付けた
時間って何だろう
ホントにそんなのあるのか
どう使えばいい
好きにすればいい
六月の半ば
除湿剤がここぞとばかり
働いている
手を伸ばせ
ただ迸る情熱だけで
ここまで走ってきた
ただ高鳴る心臓の鼓動だけを信じて
大海原を泳いできた
今ふと立ち止まり
愛を知り
失い
少年は大人になりつつある
これが最後だ
傘を忘れるなよ
サヨナラのサヨナラの後のサヨナラ
時間がバラバラになって
思い出だけ残して
まあるい穴の中に
僕を置いてった
雨が降って
地が固まり
何も思い浮かばない
肉の塊
観覧車のてっぺんで
君と僕で探したものは
今もあるのかな
5階建て
ベランダなし
君もなし
4万
散漫
笑えよ
それは素敵な恋のメロディ
一人では奏でられそうにない
あの町の夜
彼は今日も
大声で歌ってるのかな
決定
一本のマイクに
頬寄せ合い
瞳を閉じ
心を唄いあげる人
休みの日
朝から手続きに
時間を奪われた
生きるためなんて
言いたかないが
なんの目的もなく
電車に乗りたい
知らないビルには
入りたくない
これでカーソルは合っているのか
曲はもうすぐ
佳境に差し掛かる
百六十八円が
百円になっていたから
目は合っていたけど
事務的だった
当然の事だ
生きるため